《MUMEI》
ぼくとにいちゃん
……… へい ……しょう…へ……
「しょうへい!」
ぼくの名前を、あきら兄ちゃんが呼びました。
とてもびっくりして、体がびくってお魚みたいに跳ねました。
チリン
もう秋です。
目を開けると、雲がうっすら遠くに浮いています。
落ち葉の中はあったかくて気持ち良いから、また眠たくなりました。
赤 黄色 橙色 茶色 柔らかい土と葉っぱの匂い
風はひんやり。
「ああ、こんなとこに居た」
あきら兄ちゃんが、葉っぱの中から、ぼくを掘り起こしてくれました。
「一体、どう遊べばこんなに土に埋まるんだ?」
兄ちゃんはそう言って、ぼくのズボンについたお尻の土を払います。
ぼくは小さな声で言います。
「…友達、土の中じゃないと遊んでくれない」
「…え?」
「兄ちゃん、ブランコで遊びたい。」
「ん、いいよ」
兄ちゃんと手を繋いで、公園の遊具広場まで下りていきます。
腰に付けた、二人オソロイの鈴が風にいつまでも揺れていました。
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