《MUMEI》
つかまる
「ちがいます。えっと…そとのくうきすってました」


今にして思えば、それは子供らしくない答えだった。

「なんでわらうんですか!
おれ、…と、わたしへんですか?」


しかし、小さな俺は腹を抱えて笑う男に激怒していた。


「い、…いや、変じゃないよ…、うん。よくできました」

「さわるな!」


また頭を撫でようとしてきたから、バシッと手を叩いてやった。


「すぐ感情的になるところは子供だね。僕、いくつ?
お名前、言えるかな?」

「おれはしのぶ! とうどうしのぶ! もうさんさい!」

「…藤堂? ふ〜ん

で? しのぶ君は、何しに来たの?

君、まだ執事じゃないのに」

「おしえない!」


俺は、目の前でニコニコしている男に背を向けた。


ガシッ!


(へっ…?)


体が後ろに引っ張られた。

「ン〜!、ン〜!」

「ごめんね、ちょっとしずかに…ね?」


ニコニコしながら、男は俺の口を手で塞いだ。


小さな俺の体は、男の腕の中にスッポリおさまってしまっていた。


口を塞ぐ手と腰に回された腕が予想以上に強くて、全く身動きがとれなくなっていた。

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