《MUMEI》 打たれる……っ! 反射的に目を閉じた。 「へっ……?!」 掌がなんかやらかい! 「……まあまあだな。」 「 あぅ、あぅ……」 ……前髪が三センチ伸びた。 だって、 だって有り得ない! 氷室様が、僕の元チーズケーキを食べて下さるなんてっ……! 「……あっ!」 掌の中に氷室様の舌が……?! また、前髪伸びた……っ。 付け根から前髪を引っ張られる。 「隠しても無駄だ、その臑もだろ?」 掌を噛まれた。 静電気でも喰らったみたいだ。 「あっ……」 また、前髪が伸びた。 「生えたら即、自己申告、いいな?」 爪を歯で引っ張られる。 剥がれないのに剥がされそうなその感覚が……くらくらする。 「はひっ……!」 伸びた前髪を更に引っ張られた。 氷室様の顔が近付く。 「いいか、タマ。お前の飼い主の名前だ“千秋”……尊敬の念を込めて貴様に呼ばせてやる。」 耳元で、信じられない奇跡が起きていた……! 幻覚作用かもしれないのでチーズケーキ塗れの手で頬を抓った。 痛い……、チーズケーキ臭い。 前髪をオールバックにされた。 目が、無機質に僕を映していて怖い…… 「タマ、いいか。自傷行為は俺の許可が下りる以外は許さない。」 「えっ…………」 チーズケーキ臭い方の俺の頬に舌が……っ?! 「勝手に汚れるのも……、だ。」 僅かに目を細められた(気がする)。 「は……イダアアアアアアアアアア!」 舐められたとこにおもいっきり噛み付かれた。 今までの犬や猫の噛み付きを1とすると今の痛みはその100倍だろうか。 何と言う顎の力……! 歯形が付いたなこれは。 きっと丈夫な食べ物を噛んで育っていらしたのだろう……首がしなっているからまた前髪伸びたに違いない。 「ホラ、言え、自分の主の名前だ……。」 歯形をなぞられて更に爪を立てたまま頬を捩られる。 「イッ……」 痛さと前髪による首の重さに頭皮のち切れる覚悟をした。 「口を動かせ、ん?聞こえんなぁ。」 顎の力だけではなく、指の力も持ってらっしゃる……頬の肉を持って行かれて上手く動かせない。 「ぴ……ぴあきしゃま」 馬鹿馬鹿馬鹿! 折角お名前を呼べる許可を頂けたのに〜〜〜〜!ピヤキシャマってなんだ! 前へ |次へ |
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