《MUMEI》 避難場所「どうぞ」 「あ、…どうも。志貴、ほら、…大丈夫?」 「…何とか。…ここは?」 志貴は、ソファーから起き上がり、俺と、せいこさんを交互に見つめた。 俺達の前には、紅茶とクッキーが置いてあった。 あの後。 調子にのった祐が放送禁止用語を連発したから、志貴は また、気絶したのだ。 俺も、あの場所にはいたくなかったから、気絶した志貴を抱えて、ここに せいこさんのいる、『クローバー』の二階にある工藤家のリビングに避難していた。 「お姫様だっこで来るからびっくりしました。…力あるんですね」 「志貴が軽いんで」 俺とせいこさんのやりとりを聞いて、志貴が赤くなった。 (可愛いな) 身長は俺より高いが、志貴は思ったより軽かった。 「二人は、付き合ってるんですか?」 「え?」 「違う違う! ただの友達!」 何故か志貴は必死で反論した。 (…ただのは違うだろ?) ちょっと、ムッとした。 (俺にとって、志貴は…) 「彼女じゃないけど、大事な友達」 そう言うと、せいこさんは不思議そうな顔をし 志貴は、真っ赤になった。 その時、リビングの電話が鳴った。 前へ |次へ |
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