《MUMEI》
弟と僕
チリン
僕、原田 昌は、弟の正平を探している。
僕たちは最近、急な父さんの仕事の都合により、引っ越してきた。
正平も僕もそんなに器用じゃないから、二週間たった今も友達らしい友達は出来ていない。
それでも正平はクラスの子に金魚のフンとなり、近所の公園へ足を運んでいる。
しかし、正平の目的地は決してクラスの子達が遊ぶ広場の遊具ではない。
転校初日、初めてのクラス、先生、生徒・・・・
僕は殆ど口を開く事なく、学校をあとにした。
学ランで首まわりが、息苦しい。この中学はブレザーで余計に孤独感が増す。
掃除を終えて逃げるように一人で帰った。
息苦しい。
帰り道の途中、何気なく大きな公園を前に足を止めた、体育館くらい…それ以上か?テニスコートや遊具、小さな山もある。
僕は寄り道をした。
小さな山はこの時間、人気がなくて落ち着いた。
綺麗な落ち葉達が足元を彩る。
僕は左足の銀杏の葉を摘み上げる――――
ムニッ
「…むに?」
恐る恐る視線を落とす。
…摘み上げた葉っぱから人間の指が!
「ギャア!」
咄嗟に後退する。
落ち着け…落ち着け、落ち着け!
一先ず深呼吸。
「ハア………って、あれ?しょ、正平?」
そうだ、この赤い服!
落ち葉が僕の掌に捕まっては弾ける。
……チリン
ああ、やっぱり!
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