《MUMEI》 速達あたし宛てに一通の手紙が届いた―。 これがすべての始まりである。 「何これ??都立○×高校??」 私はちょっと間を空けてから封を切った。 『合格通知』と書かれていた。 「あたし・・この学校受けてないし・・」 中3の受験生。あたしはあまり体育とか、実技の教科はできない。でも、理数だけは得意なんだ。 「私・・この学校に入りたかったんだよね」 私の学力じゃ、ここには行けないって諦めてた。 ○×高校は、敷地面積が広いことで有名だ。日本一でかい学校という呼び名が付けられているほど。 「でも、ここ遠いんだよね…」 私は都会生まれ都会育ちだった。でもこの学校というと・・東京の外れ。東京都の中で一番大きい市。その土地を全部この学校が買収し、学校の敷地としたわけ。 「合格ってことはここの行けるんだよねッ!!」 理数系のメカオタク系の学校だけど・・女子の人数を増やすために制服をかわいくして人気になった。 「うわ〜、あの制服が着れるんだぁ。幸せ」 「ただいま」 「お母さん?○×高校から合格通知が来たのッ!!」 「○×高校??そこ・・受験した所じゃないわよね・・?」 「そうだよ」 「何でかしら?」 「でも、あたし宛ての手紙だし」 「夏鈴(かりん)はその学校に行きたかったんでしょ?」 「うん・・」 「じゃあ手続きしに行かなくちゃね」 「うんっ」 お母さんはすんなりと○×高校に入ることに賛成してくれた。反対されるかと思った。遠くてあっちに住まなきゃいけないから。 夜―。 「お父さん、あたしね・・○×高校に受かったのッ!!」 「何でだ?あの学校は受けてないはずじゃないか」 「分からないけど・・合格通知が来てるの」 「それは間違いだよ」 「でも…これであたし合格できるんだよ?」 「ばれたらどうなるか分かってるのか?」 「分かってる・・分かってるけど一番行きたいのは○×だよ」 「俺は許さないからなッ!!」 「待って、お父さん・・」 「夏鈴・・じきにお父さんも分かってくれるわ。あなたがいなくなるのが寂しいだけよ」 「そうかな?」 あたしは部屋で合格通知を眺めた。これで憧れの○×に入れる・・。 「コンコン、夏鈴いるか?」 「…何・・?」 「本当に・・○×に行きたいのか?」 「当り前じゃない!!この学力では入れないと思ってたけど・・一年生からの憧れの学校なんだよ?第一志望よりも・・あそこに行きたいのッ!」 ドア越しのお父さんに言う。 「一人暮らしできるか?」 「うん。分からないこともたくさんあると思うけど・・○×に入るためだったら頑張れるよ」 「そうか、そうか。本当にいいんだな、後悔しないんだな」 「しないよ」 「じゃあ、第一志望を蹴るんだな」 「・・うん」 「じゃあ手続きしに今度行こう」 「いいの?」 「お前が自分でいいと思うなら、俺は何も言わない。ただし、勝手に退学しないこと。それとさっきの事を秘密にすること。わかったか?」」 「分かった」 「それが守れるならいい。守れなかったら退学させるからな」 前へ |次へ |
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