《MUMEI》

洋介さんが、2階からお姉さんの服を持ってきてくれた。成原さんはそれに着替え、ボロボロの制服は処分してもらうことになった。

「洋介、いつも悪いな。」

「ナナさんの頼みなら、しょうがないっすよ。また近いうちに。」
飲みに行こうという、合図なのだろう。片手をクイッと上にあげた。


私たちは、先生の車に乗り込んだ。成原さんの自宅の方が近いので、後に降りる私が助手席に座る。

無言の空気が漂う・・・。

「あの。」
成原さんが口を開いた。


「・・・広崎さんは、私のこと許せるんですか・・・?」

「え?」
私は返事につまった。
確かにいろいろされたけれど・・・

「・・・私は許せないからって、人に罰を与えられるような立場ではないし、全てを許せるほど、立派な人間でもないよ。」

「・・・。」

「成原さんが、頑張って生徒会とかも復帰して、杉田くんとも正面から向き合えるようになったら・・・。それから考える。」

私がそう言って振り返ると、成原さんは少しだけ、笑顔を見せた・・・ような気がした。


すぐに家の前まで着き、成原さんは深々とお辞儀をして、車を降りた。

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