《MUMEI》
偽りの誕生日
是非泊まって行ってと言われたが、俺が断固拒否したので、他の五人も何故か俺に従い、俺達は、駅前で別れた。


(何か、ますます普通から遠ざかりそうな気がするなあ…)


驚愕の事実を知った俺は、重い足取りで自転車をこいでアパートに戻った。


「おかえり、ハニー」

「ただいまダーリン!」


棒読みで叫び、俺は部屋の中に入った。


「風呂入ってるぞ」

「そりゃど〜も!」


すぐに荷物を置いて、風呂場に向かった。


(毎回毎回、いきなり来るなよな!)


忍がそういう人間だとはわかっていたが、落ち込んでいる時に来なくてもいいと思った。


「こっちへ来い」

「何だよ」


俺は、タオルで頭を拭きながら、忍の向かい側に座った。


忍も俺もパジャマだった。

(相変わらず、完璧過ぎるんだよ)


しかも、お揃いだった。


「今日は、三月二十五日だ」

「知ってるよ、だから?」

「普通は、これだろう?」

忍は、机に置いてあった箱を開けた。


(あぁ、そうか)


そこには、丸いケーキがあり、『HappyBirthday』と書かれたチョコレートがあった。


今日は、忍が『決めた』俺の誕生日だった。

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