《MUMEI》
初めての誕生日プレゼント
俺の誕生日を、俺は知らない。


忍は知っているだろうが、本当の誕生日を教えてもらった事はなかった。


旦那様は、俺の誕生日を一度も祝わなかった。


(多分、俺が年をとるのが嫌だったんだろうな)


律儀に十六本のローソクを立てていく忍を見ながら、そんな事を考えていた。


ちなみに、何故今日にしたかと言えば、俺が普通より貧弱な体だから、三月生まれにしとこうと、忍が適当に決めたのだ。


「…歌うか?」

「いい。…消すぞ、もう」

忍の歌など聞きたくなかった俺は、一気にローソクを吹き消した。


「指輪は?」

「…送った」


俺は出来上がった三つの作品を昼間郵送したばかりだった。


「何だよ、お前が悪いんだぞ」

「仕方ないな、…手、出せ」

「?」


ため息をつく忍の目の前に、右手を出すと、何かを握らされた。


「…何、これ?」

「誕生日プレゼントだ。はまる所にはめろ」


(そう言われても…)


どう見ても、これが入るのは


「はまった」


俺は、忍に小指にはまった赤い指輪を見せた。


忍は無言で頷くと、一つしかない布団で寝てしまい、俺は寒さに負けて、仕方ないからその中に入って寝た。

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