《MUMEI》
父の主
父の主の名前は清也(せいや)という。


一度だけ、お会いした清也様は、とても美しい男性だった。


当主の能力は、普通らしいが、パーティーではいつも皆の中心にいる方だというのも納得できた。


しかし、清也様は、普通より、かなり体が弱い。


よく微熱を出されたり、貧血で倒れたりする。


だから、父は清也様を支える為に、医療の勉強もして、簡単な処置なら行えるようになっていた。


「也祐様が当主になられる日は、予想以上に早いかもしれないな」


俺の隣で、父は小さく呟いた。


数分後。


会場に現れた清也様は、確かに以前より顔色がよくない気がした。


実は、清也様の奥方は、とても聡明で元気な方だったが、昨年交通事故で亡くなっていて


その事も、清也様の体調を更に悪化させたのだと、父は説明してくれた。


(なりひろさまは、だいじょうぶだろうか)


十二歳で、母親を突然亡くして


父親も、病弱で頼り無くて

もしも、あの三人やサルが言っていた通りの人間なら

(おれが、しっかりしないと)


俺は、病弱な父親に紹介されるまで、出てこれないような情けない男が主かと思うと、改めて悲しくなっていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫