《MUMEI》

「三葉の面倒見てくれてありがとねぇ、お守りや破魔矢を買ってたらつい時間が……」

にぱにぱと笑顔を振り撒いて太郎兄が走って来た。足元がぐらついてて危なっかしい。


「あ、やっぱコケた。」

お守りが散乱した。
こうゆうトコ、兄弟だ。



「大丈夫ですか?」

るりちゃんのママがすかさず手を差し延べる。


「わわわ、ありがとうございますう」

あり、なんかこれ……?


「あ、恋のニホヒ……」

七生がぽつりと言う。
うわあああ、やっぱりーーーーーー?!


「ああ、いけないロマンスのな……」

ぽつりと宗方さんが言う。


「うわああああああああああああああああああ聞こえませんよ、キーコーエーナーイー!」

江戸の人(江戸っ子だったので)が頭を振って何かと葛藤している。


「岸君が崩壊した!」

宗方さん、楽しそうだな。


「二郎達のお友達?」

……我が兄の凄いトコ。
周りの状況を読み取らがらない器の広さ。


「乙矢の知り合いみたい。」


「タロ兄、飴貰ったー。」

七生は俺の横で棒をふり回す。


「わあ、よかったねー。」

太郎兄が居るとのんびり話したくなる不思議……。



「……あの、良ければお名前を……」

るりちゃんのママがタロ兄に名刺を渡す。


「美作太郎です。この子が三葉です。」

乙矢の抱く三葉ちゃんを指す。


「可愛いお子さんですねっ……俺は利恵さんの同僚で岸です!」

江戸の人が二人の間に割って入る。

「ああ、早く帰らなきゃまだ買い物ありましたよねえぇ……?!」

なんだか、見ているとせつないです江戸の人……!


「見ているこっちが悲しくなるよね?」

宗方さんはこそっと後ろで耳打ちした。

「それじゃあ、帰ろうか。会えて光栄でした、またお会いしましょう。」

宗方さんが凛々しい姿で挨拶する。
大人の人の挨拶だ。

俺も軽い会釈をして大人の仲間入り……?


「じゃあなー。」

七生は両手一杯に手を振り上げる。


「あー、そうか。」

太郎兄はるりちゃんのママから頂いた名刺を見ながら笑う。


「えー知り合い?」

なんだか怪しいな。


「ふふ、ヒミツでーす」

タロ兄にはぐらかされた。
車のキーを七生が開ける。



「あ、忘れ物。」

乙矢にしては珍しい。


「探すの手伝うよ?」


「大丈夫。帰り遅れるかも」

乙矢は三葉ちゃんを託して居なくなる。
もう、塵だ。


「コレ、か?」

七生が中指を立てた。


「どれだよ。」

言わずにいられなかった。

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