《MUMEI》 挑発その女の人は、也祐様と同年代に見えた。 白いドレスは、見るからに上質な素材でできていたし、屋敷の二階は特別なお客様の為の空間である事を、俺は父から学んでいた。 ちなみに、一階はパーティー会場と親族の控室があり 三階は、也祐様と清也様のプライベート空間になっていた。 それは、この二年の間に俺が学んだ事だった。 「はじめまして。とうどうしのぶです。 本日は、ようこそおこしくださいました」 二年前の反省を踏まえて、俺は緊張しながら挨拶した。 「小さいのに、偉いわね。忍君は…」 「しのぶでいいです」 君付けで呼ばれる事に俺は慣れていなかった。 「忍は、どこに住んでるの?」 「あっち」 俺は使用人用の屋敷を指差した。 「『あっち』じゃわからないから、もう少し、詳しく言えるかな?」 「どうしてですか?」 「どうしても、知りたいの。あ、でも、忍はまだ五歳だもんね 無理よね?」 女の人が、悪戯っぽく笑った。 「もう五さいです!」 「でも、忍の部屋を知らない私が一人で行けるように説明するなんて、…やっぱり無理よね」 「できます!」 そして、俺は説明を始めた。 前へ |次へ |
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