《MUMEI》
一番の笑顔
「それで、その天使さんは忍の部屋に行っちゃったのかい?」

「…はい」


『忍が見たことを、そのまま也祐に伝えればいいから』


そう言って


あの、天使のような女の人は俺の部屋に行ってしまったのだ。


追いかけようと思ったが、パーティーには出たかった。


『也祐が今日、面白い事をするよ』


一度だけ俺を振り返って言った女の人の言葉が気になって仕方なかったから。


「全く、相変わらずだなぁ」


(あ…)


何となく俺は直感した。


あの、長い黒髪に、大きな黒い瞳の


白いドレスに近い白い肌の

当時の俺にとっては美しい

普通の男性にとっては可愛いらしい顔付きの


天使のような、あの女の人が


以前から、父が言っていた也祐様が心から信頼している唯一の人


その人を語る也祐様は、初めて会った時よりも、もっと穏やかで


一番、いい笑顔をしていた。


(いいな…)


何故か、そう思った。


その時、胸が何故かズキンと痛んだ。


「忍? どうした?」

「あ、いえ…しつれいします」

「忍」

「はい?」

「これから起こる事を、よく見ててね」


也祐様から、いつの間にか笑顔が消えていた

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫