《MUMEI》
俺の部屋
「おかえり、お疲れさま。ちゃんと、猫っかぶり卒業してきた?」

「ただいま、じゃじゃ馬天使様。ご心配なく。きちんと出来ましたよ」

「ここ、おれのへやです…」


他に気になる事はたくさんあったが、とりあえず、控え目に事実を伝えた。


「そういえば、忍の部屋って、初めて来た」

「そうなの? ダブルベッドだからてっきり…」


(?…なんだろう?)


ダブルベッドは、藤堂の家系は長身が多いから、いずれ俺も大きくなるだろうと父が思って用意した物だった。


「残念ながら、あなたの期待に応えるような関係ではありません」

「どういうかんけいですか?」


旦那様の大切な人の期待に、俺は応えたいと思った。

「ごめん、忘れて」


女の人は、ダブルベッドから起き上がり、正座して謝った。


「なんでですか?」

「本当にごめんなさい。忘れて下さい」


女の人は、俺と旦那様に深々と頭を下げた。


「じゃないと、栞(しおり)さんと紫(ゆかり)ちゃんに怨まれます」

「あぁ… 会ったんだね」

旦那様は、部屋にある白百合の入った花瓶を見つめた。


栞は俺の母親で、庭師の娘だった。


紫は、今年生まれた俺の妹の名前だった。

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