《MUMEI》
聡理
谷口聡理-サトリ-

オレが生まれてきた赤ちゃんにつけた名前。

別に何も言われてないけど、オレと有理に共通している“理”の漢字を入れた。

「聡理〜!!」

「う…わっ流理、静かにしろって。今やっと眠ったばっかりなんだ」

「ゴメン。だって有理が本当に聡理抱かせてくれないから」

「その代わりに名前をつけさせてやったじゃないか」

「そうだけど……。なんで有理はオレに聡理抱かせてくれない訳?」

「オレとお前がいることで聡理には父親がふたりいるように見えるだろ?こんな早くから大変な思いをして欲しくない」

「意味わからない…」

「有理、聡理が眠っている間はいいんじゃない?」

「抱き上げて起きたらどうするんだよ」

「また寝かせればいいわ。流理さん、どうぞ」

「いえ、大丈夫です。オレも聡理が双子ということを理解できるまで待ちますよ」

自分の子供までオレと間違えられたら確かにショックだよな。

父親になっても相変わらず考えることが子供だな、有理。

「……と、仕事だ」

「あっ流理」

「何?」

「お前ってもう三年だよな?進学……するのか?」

「ん〜まだ考え中」

「………そっか。オレさ大学は強制しないよ。流理は頑張って高校行ってくれたし」

「うん。わかった。じゃあな」

高校卒業したら、この家を出る。それしか考えてなかった。

大学……か。

大人気の芸能人が有名大学に通い、ちゃんと卒業したことでニュースになっていた。

やれる人はちゃんとやれるんだなぁ。とりあえず前向きに検討しよう。

「有希?」

「月岡さん。なんですか」

「三年だろう?進学は考えているのか」

「……今日有理にも同じこと聞かれました。どうしようか考えてます」

「もし進学するなら早めに報告しないと。仕事内容も変わってくるからな」

「ハイ、早く結論を出します」

学校の先生にも相談してみよう。

大学なんて考えてなかったから、自分の学力に見合った大学なんてわからない。

また、忙しくなりそうだな。

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