《MUMEI》
天使の名前
「そろそろ名前を名乗った方がいいんじゃないかな?」

「あぁ、そうね」


女の人は、話がそれてあからさまにホッとしていた。

俺としては、関係についてきちんと知りたかったが、女の人の名前や旦那様との関係も知りたかったから、口を挟まなかった。


「神坂 姫華(こうさか ひめか)って言います。

直に田中になるけど…

よろしく!忍」

「よろしくおねがいします」


俺は、姫華様の眩しい笑顔に圧倒されながら、握手をした。


「じきにけっこんするんですか?」


名字が変わるということは、普通はそういう事だと思った。


「違う違う! 生まれ変わるの!」


…?


姫華様の言葉の意味がわからずに、俺は首を傾げた。

「とうとう、説得したのかい?」

「…うん。 ごめんね、也祐」


姫華様の明るい表情が一瞬曇った。


「…どうして謝るんだい?」

「何となく」


そんな姫華様の頭を、旦那様は優しく撫でた。


「君がいつも言ってた夢が叶って、私も嬉しいよ。…『目指せ 普通!』、だろ?」

「うん…うん! そうだ! 私、子供たくさん作るから、也祐に一人あげようか?」

「私にやったら、普通じゃなくなるよ?」

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