《MUMEI》 忘れられないやりとり「そうだけど…でも…」 そこで、何故か姫華様は俺を見つめた。 俺は、二人の会話に入っていく事が出来ずに、ただ立っていた。 「私の事はいいから、幸せになりなさい」 まるで、父親が娘に言うような言葉だった。 「…オヤジ臭い」 「酷いな」 そして、二人は顔を見合わせて笑った。 「それにしても、何で田中にしたんだい?」 「屋敷の周りが田んぼばっかりだから」 また、二人は笑い合った。 「おれ、わすれてませんか?」 俺はたまらず口を開いた。 「忘れてませんよ〜」 「ね〜」 (なんだよ、二人して) 膨れる俺を見て二人が微笑んだ。 そして、姫華様は帰り際、真剣な表情で俺に告げた。 「也祐をお願いね、忍」 「とうぜんです」 即答する俺の手を、姫華様はギュッと握りしめた。 「本当に、お願いね、忍。どんな也祐も、…受け入れるのは無理でも… ずっと、ずっと 側にいてあげて」 「うけいれますよ?」 俺の言葉に、姫華様は、何故かものすごく悲しそうな顔をした。 これが、俺と姫華様の最初で最後の出会いだった。 このやりとりを、俺は一生忘れない。 前へ |次へ |
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