《MUMEI》
去年と違う事
「おかえり〜」

「大変だったな」

「志貴さんの手を煩わすなよ」

「だったら、お前等が助けろよ…」


俺は、守・真司・拓磨の三人を睨んだ。


「「ムリムリ! 英語無理」」


珍しく守と拓磨がハモった。


「真司は大丈夫だろ?」

「ん〜 微妙」


(俺より英語の成績いいくせに)


「あのなあ、会話とテストは別物なの。俺、発音苦手だし」


(そう言われれば…)


確かに、英語の授業中、真司は発音を何度も注意されていた。


「発音だけなら祐也の方が上だろ?」

「上どころか、祐也はペラペラだもんね」


「そうなのか!?」×3


志貴の言葉に三人が目を丸くした。


「一応、普通に喋れるだけだよ。ホラ、先生来たぞ」

俺は四人に席に戻るよう告げた。


(あんなに驚かれるなんてな)


英語以外も話せる事は、守達には言わない事にした。

それは、自分を偽る為では無くて。


自慢しない事


それが、俺にとって普通だからだ。


そして、俺は去年と同じように図書委員に立候補した。


それは、志貴から逃げる為ではなくて、俺自身が図書委員の仕事を気に入っていたからだった。

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