《MUMEI》 生まれ変わる滅多にパーティーに出ない姫華様は、世間では勝手に『病弱な深窓の令嬢』扱いされていた。 確かに、当時十八歳だった姫華様は、童顔で華奢で色白だったから、親しくない者なら、そういう印象を受けたかもしれない。 そんな姫華様が、病死したと聞いて、世間は簡単に納得した。 信じなかったのは、俺と旦那様、それに父と清也様の四人位だったと思う。 葬儀は神坂家の身内だけで行われ、旦那様も出席できなかった。 そして、旦那様は姫華様の病死の知らせを神坂家から受け取ったその日に、一通の手紙を受け取った。 「忍、見てごらん」 嬉しそうに、旦那様は俺に同封された写真を見せた。 「これ…」 「これが、あの日のやりとりの答えだよ」 そこには、長い黒髪の美しく儚げな令嬢ではなく 男のように短い髪に、バイト先のコンビニの制服を着ている元気な女性が写っていた。 その笑顔は、初めて会った時よりも輝いていた。 封筒には住所は記されておらず、ただ 『田中 姫華』とだけ書いてあった。 「良かったですね」 「うん」 その写真を、旦那様は引き出しに入れ、カギをかけた。 前へ |次へ |
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