《MUMEI》
お休みなさい
昌は眠りにつくことが出来なかった。
数時間前の、あの怒声が耳について離れないからだ。

最初は、違和感を感じていた正平が昌の布団に潜り込むという習慣も、馴れたもので今では一つしか布団は敷いていない。


「あきら兄ちゃん…」正平がもぞもぞ頭を揺らす。

「どうした?眠れない?」昌は出来るだけの笑顔を見せてやる。

「ぼくは、父さんと母さんどっちと住めばいいの?」正平の黒い目が、昌の胸の内を見透かしているようで思わず、目を背けてしまう。

「………どうしたい?正平は…」昌はそれだけいうので精一杯だった。

「ぼくは、わからない。決めるのは、ぼくじゃないよね?」正平は真っ直ぐに、昌を見据えた。

昌は口を歪ませる、なんだか可笑しくなってきた。「そんなことより、正平は大きくなったら何になりたいの?」

「ウルトラマン!」正平は布団の中で、足をバタバタさせた。昌はいつもなら注意するが、我慢した。



「…あと、お山。」

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