《MUMEI》
本気にするな
「隆志、裕斗のやつ俺の事…、どうしよう」



「は?どうした、なんかまた馬鹿な事言われたのか?」







目尻に浮かぶ涙を指先で拭い取り、惇の髪を撫でる。





惇はたどたどしい口調で電話の内容を言った。







頭を左右に振ったりため息をついたり、


見ているだけで痛い、切なくて…







いや、おかしくて俺は惇を力いっぱい抱きしめた。



「…でも、惇は俺の事取ってくれんだろ?」





「あたり…、まえ…グズッ、どうひよ?
…ふぅ…」




必死にしがみつく小さな身体が愛しくてちょっとまたムラムラしてきたり。




こんな時に不謹慎だとは思いつつ惇の顎を上げると、惇は俺をじっと見た後、目を緩く閉じた。





触れるだけの短いキスを数回繰り返し深く唇を合わせる。




惇も腕を俺の首に回し、キスが本格的に止まらなくなって。


「…泣くなよ」





「うん、…」




「大丈夫だよ、な?」




「うん……、ァっ…」





耳の裏側を舌先で擽ると惇は震えながら甘い息を漏らした。


ずっと抱きっぱなしの体、見慣れた反応なのになぜか毎回新鮮で、欲しくて堪らない。




また唇を合わせ、シャツの下から手を入れていく。



滑らかで熱い肌を探りだしたとき


「♪♪♪♪♪」


「「…はあ……」」




同時にため息。




惇の携帯が叫び声を上げた。





仕方なく惇を解放すると惇は髪の乱れを直しながら携帯を掴んだ。





「……仁…」




「え?…」





思わず惇を見る。






惇は俺をじっと見たまま携帯を耳にあてていて…



俺は察し、咄嗟に惇の手を強くにぎる。



すると惇はそれ以上の力でかえしてきた。






…震えていた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫