《MUMEI》
先輩
(…よし!)


俺は、扉の前で深呼吸をした。


コンコンッ


「はい?」

「こんばんは、西条(さいじょう)先輩」

「こんばんは。ええと、もしかして、君は噂の外部生君かな?」

「はい、そうです」


十三歳の俺が入学したのは、全寮制の男子校だった。

この学校は初等部から高等部まであり、中等部から入学する者は珍しかった。


そして、西条雅(みやび)先輩は、この学校内ではある事で有名な人だった。


「で…え〜と」

「忍です。藤堂忍」

「忍君は、こんな夜中に俺の部屋に何しに来たのかな?」


一つしか違わないはずなのに、やけに大人びた


旦那様のように優しい口調で西条先輩は質問した。


ただし、西条先輩は旦那様と違い、整った顔立ちをしていた。


「男同士のセックスを教わりに来ました。俺を抱いて下さい、先輩」

「…は?」

「シャワーも浴びてきたし、腸内洗浄も済んでます」
「…」

「ちゃんとローションもゴムも…、うわっ!」


しばらく唖然としていた西条先輩が、俺を部屋の中に引っ張った。


「『先輩好きです、抱いて下さい』だったら即オッケーなんだけどなあ…」


西条先輩は複雑な表情をしていた

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