《MUMEI》 決定光岳高校進路室。 「先生、オレ自分が何を学びたいかわかりました」 「本当?その言葉を待ってたわ」 「オレ、心理学に進みたいです。児童心理学を学びたい」 「心理学?それはどうして?」 「…弟に子供ができ、それからずっと子供という存在に興味がありました。それに、オレと弟は小さい頃に両親を亡くし、心に傷を負っています。それの対処とか仕組みとか……知りたいなって思ったんです。オレと弟がこうして明るくいられる理由もよくわからないんですけどね」 「取りたい資格は?」 「とりあえずカウンセラーです」 「わかったわ。それを考慮して大学探しましょう。場所はもちろん東京ね」 「よろしくお願いします」 カウンセラー。 軽視してはいけない職。 発せられる言葉のひとつひとつに耳を傾け、発する言葉をひとつひとつ選んで使わなければならない。 最近までのオレの目標が有理を学校に行かせることだったから、新たに目標ができて個人的には満足。 もちろん、いつかは有理を学校に行かせるつもりだけど。 「聡理?」 小さい聡理の成長もめまぐるしい。日に日に顔のパーツがはっきりしていく。 「おー目はオレにそっくりだな。口元は早苗さんかな」 「バカ、お前じゃなくてオレだろ!」 「双子だから関係無い」 「大いにあるだろ。……いや、若干かな」 「もうどっちでもいいよ。聡理は聡理だ」 オレと有理の聡理の取り合いは今に始まったことじゃない。 早苗さんもそろそろ無視を始めた。環さんまで。 「お前勉強しろよ」 「A判定出てるから、受かったも同然」 「ふん。スキャンダル起こして判定落とせ」 「スキャンダル?お前じゃないから起こさないよ」 「なんだと?」 オレはいきなり環さんに蹴りを食らった。有理は早苗さんに。 「うるさい」 「……ハイ」 「すみませんでした」 女の人って時々怖い。 前へ |次へ |
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