《MUMEI》
ウソツキ
(やっぱりな)


案の定、頼は希先輩が連れていた可愛い系の少女


長谷川 瑠美(はせがわ るみ)にすぐに関心を持った。


「じゃあ、祐也また明日!」

「一応先輩付けろよ」

「明日からね!」

「何なんだあいつは…」

「お前も行かなくていいのか?」


俺は隣で脱力している柊に話しかけた。


長谷川さんと頼と一緒に、希先輩も校庭に向かって行った。


「行くよ。行くけど、…あのね、祐也。さっきの頼の言葉なんだけど」


(…どれだ?)


「志貴の事」


首を傾げている俺に、柊が告げた。


「俺も志貴も、祐也の過去、すごく気になるよ」

「…え?」


俺は、…ギクリとした。


「でも、祐也が言わないし、…知ってるだけでも、いろいろあるから、祐也を傷付けたくないから、きかないだけ」


(違う)


胸が、痛んだ。


柊が知る俺の過去は、本当の過去では無いから。


「そんな顔しなくていいよ。俺も志貴も、皆…今の祐也が好きで、側にいるんだからね」


そして、柊は希先輩を追いかけていった。


その背中を見つめながら、俺は強い罪悪感に襲われていた。


手の中にある箱が、やけに重く感じた。

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