《MUMEI》
先輩の好み
「すみません」


俺が謝ると、西条先輩は大きくため息をついた。


「同室者には、何て言ってきたんだ?」


寮は、一年生は二人部屋で、二年生から一人部屋だった。


だから、今俺と西条先輩は二人きりだった。


「田宮(たみや)には、今日先輩の所に泊まるって…」

「あぁ、じゃあ駄目だな」

「何がですか?」

「今頃真っ最中だろうから、お前が帰ったら邪魔だ」

西条先輩の言葉に俺は頷いた。


男子高にはホモがいるだろうと、俺は簡単に考えていたら…


予想以上に多かった。


そして、初等部から入学していた田宮には、既に彼氏がいたのだ。


「もしかして、田宮から俺の事を聞いてきたのか?」

「田宮だけじゃなくて皆言ってますよ」

「…何て?」

「西条先輩が、すごくセックスが上手くて、モテるのに彼氏作らなくて、好みなら、誰とでもヤル人だって」

「で? お前は俺の好みだと?」

「…そう聞いてきました」

西条先輩の好みは、可愛い系


ではなくて、それなりに筋肉がついた、凛々しい顔立ちをしたかっこいい系だと聞いていた。


この頃俺は既に声変わりを終え、身長は170近くあり、年齢の割には大人びた少年だった。

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