《MUMEI》
余興
「ラストは上出来だったな。」


帰り支度を始めながら、神道がポツリと呟いた。

「俺、あんな速い球見たの初めてだぜぇ!!」


山村も顔を緩ませる。


「だろだろ!!自己新突破したんだからな!!!」


俺はつい嬉しくて、そいつらにVサインを送った。


「やめとけ!付け上がるだけだ。」


豪田が間に割って入る。

だが、顔からは怒っている表情は伺えない。


たぶん、俺をからかっているのだろう。


「なんだよ!!人がせっかく良い成績残したってのによおっ!!!」


俺はそう言ってから、プイっとそっぽを向いた。

途端にベンチ内がドッと賑やかになる。


「な、なんだよ皆して!!」


あたふたする俺をよそに、


「お前さ、テレビとのギャップ在り過ぎ!!!」

「素バレたらヤバいんじゃねぇ!!?」


笑い声と共に、そんな言葉が聞こえて来た。


「あ、アレは!!
………」


何か言い返そうとすると、扉が少し開いているのに気が付いた。


良く見ると、颯ちゃんが目を閉じて、壁に寄り掛かっている。


俺は颯ちゃんの姿を目にした途端、


「颯ちゃんっ!!!」


そう叫ぶと、一目散に扉の所へすっ飛んで行った。

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