《MUMEI》 氷室 千守と交流「だーれだ?」 瞼が覆われた。 突然だったので多少、腕が疼く。 「……千守どうした。」 「もー!先に言わないでよ千秋兄さん。」 千秋様が考えるより先に正解してしまう。 白い学生服に身を包み、碧眼にプラチナ・ブロンドの千秋様の弟、千守さんが真後ろに立っていた。 眩しくて、後退りしそうになる。 「今日は体育館を借りに来たんだ。」 中等部の校舎が火災で水浸しになってしまい、大學や他の校舎を借りながら授業しているのだ。 「だから、此処に居る理由は?」 千秋様、千守さんと二人が肩を並べると壮観だ。 でも、千秋様の言葉に棘があるような? 「だから体育館に行くんだってば。あ、でもお陰で珠緒に会えたね。」 千守さんが僕の頬をプニプニと突く。 僕より千守さんが年下とは思えない落ち着きだ。 微笑みは千秋様のお家の方の中では群を抜いて柔和だと思う。 笑う際、伏せた瞼を埋める睫毛までも銀色で綺麗だ。 「珠緒、照れて可愛いね……いいなあ。」 千守さんを近くで見たらとてもどきどきする。 でも視界の端にちらつく千秋様の暗雲が見えているからなのかも……。 「千守、予鈴。」 千秋様は単語で会話する。 「はい。じゃあね珠緒。」 千守さんは雅やかに手を振った。 前へ |次へ |
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