《MUMEI》

◇◇◇

「あんこっ、味見してくんね?(笑)」

あたしが来た事に気付いた瞬間──

蜜樹君がすかさず菓子器を持って現れる。

満面の笑みを湛えて。

お座敷に通されて座ると──

≪コトン≫

「これさ、どうかなって思ったんだけど──」

そう言って蜜樹君が菓子器を置いた。

≪ふわ‥≫

黒砂糖の甘い匂い。

「えっと、これって確か──‥」

「花林糖(笑)」

あたしの右肩の辺りから覗き込むみたいに──

蜜樹君がひょっこりと顔を出して言った。

◇◇◇

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