《MUMEI》

一方、尚は―

「…ゆうみ!」
「何?」

「ちょっと、俺…相談したい事があって」

兄弟なんだから…別にそんな構えなくたっていいのに。

「? どうしたの?」
「父さんは…知らないよな?」

尚は何を話そうとしてるんだろう…。

「なにを!」
「だから…親友と付き合ってるって」

「龍也さんと?」
「あぁ」

ゆうみはおかしくなった。
「え!あんた達付き合ってたの!?」
そりゃあ…ショックだよなあ…

「男同士で?」
「馬鹿!でかい声出すな!」

男の名前出せば関係ないんじゃないのか?
俺はそう思うが…

ゆうみは赤毛の長い髪を揺らしながら、下へ降りて行った。

「母さん!」
「あぁー!馬鹿!言うなって!笑い事にされるだけだから!」

母親はテレビを見ていたようだ。

「何?ゆうみ」

「な…尚が!」
おいおい…姉ちゃんガクガク震えてるぞ…大丈夫か?

「男同士で付き合ってるって!!!」 

あ〜あ…やっちまった…。
俺達の関係が…

「なんですって!?」

「か…母さん!これは普段仲が良すぎてそれでホモだとゆうみが勘違いしてるわけで!」

必死に抵抗してやがる…
まるで母さんを警察みたいに見てるみたいじゃないか。

「アハハ!アハハ!あんたが…?」
やばい、こりゃあ大爆笑だなぁ。

(どうするんだよ、ゆうみ…)
(仕方ないでしょ!いずれは言わなきゃいけない事なんだから)

「尚…?冗談もいい加減にしなさい」

その時の尚の衝撃は、漫画の効果音で言えばガーン!!が似合いそうな程、残念な顔をしていた。


「…尚…」
「ゆうみ、分かったか?世間ではこういう表情が普通なんだぞ?」

「でも、あんたは認めてもらいたいんじゃないの?」
本当はそうだ…認めてもらいたい。しかし、男同士の結婚なんか、聞いた事がない。

「…ゆうみ…それを言うなって」
「だって本当の事じゃない」

でも、尚は諦めてはいなさそうだった。

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