《MUMEI》
疑惑
昌は常日頃考えていたことがある。
弟の正平についてだ。
正平は友達が出来たと言っていたが、どうにも信用ならないのだ。
一度だって公園で誰かと話しているところを見たことはないし、迎えにいけば山で半身土まみれになっている。
しかし
食事中父親の前で楽しそうに友人について話す正平は嘘をついているとは思えなかった。
正平は悩んでいた。
授業にイマイチついていけないこと、
両親が不仲だということ、明日の参観日のこと、
友達と話せないこと
ふわふわな世界を自分しか知らずにいる優越感。
それさえあれば、ずっとこの単調な生活さえも
楽しいと思えてくる。
どこかで違うと否定しながら
このままで居たいと考えていた。
正平は自分が選択出来ないのに、なぜか思考してしまうことに激しく悩んだ。
何を信じて
何をどう行動すればいいのか。
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