《MUMEI》
焦り
「まぁ、間違ってないけどさ…
お前、他に好きなヤツいるのに、何で俺に抱かれにくるわけ?
教えてほしいなんて…普通、おかしいだろ?」

「何で…」


(他に、好きな人がいる事を、この人がわかるんだろう?)


「そりゃ、経験豊富だから」


西条先輩は、俺にウインクした。


「だからさ、仕方ないから今晩は泊めてやるから、俺じゃなくてそいつに抱かれてやれよ」

「それじゃ駄目なんです!」


急に叫び声を上げた俺を見て、西条先輩は目を丸くしたが、俺は構わずに『駄目だ』と何度も繰り返した。

叫んでいるうちに、涙も出てきたが、構わなかった。

「…もういい」

「おい?」

「もういい!他に頼むから!」


この学校には欲求不満なホモがたくさんいるのだから。


「待て! 忍!」

「うるさい! 離せ! 俺はちゃんと男を受け入れられる体にならないといけないんだ! 一刻も早く!」


(旦那様の為に)


あの、可哀想な人を今度こそ俺は受け入れたい。


「愛してるんだ!心から! だから、痛がったりしたく無いんだ!
もう二度と拒んだりしたく無いんだ!」


俺をいつまでも捕まえている西条先輩に向かって、怒鳴りつけた。

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