《MUMEI》
真面目な遊び人
「それが、ここに来た理由か?」

「そうだよ! わかったら離せよ!」


俺は敬語も忘れて、西条先輩を睨みつけた。


「でもなあ、…ボロボロにされたら、…さすがに、なぁ…」


西条先輩は俺を見ながらブツブツと独り言を繰り返していた。


「忍」

「何だよ!」

「俺で、本当にいいのか?」

「何が!?」

「だから、好きなヤツじゃなくて…俺と

…セックスしてもいいのか?」


今度は俺が目を丸くする番だった。


至近距離にいた西条先輩の表情は真剣だった。


「…いいのか?」

「俺が訊いてるんだけど?」


俺の質問に、西条先輩が苦笑した。


「だってお前さっき…」

「雅」


西条先輩が俺の唇に人差し指を当てた。


「セックスするなら、名前で呼び合わないとね」


(あ…)


『也祐って呼んで』


俺は、昔を思い出した。


「わかった。雅」

「よし。…でも、今日はしないよ」

「何で?」

「初めては、次の日も辛いから。続きは金曜日の夜」

そう言って、西条先輩…


雅はソファーに横になった。


(意外と真面目なんだな)


俺は、雅に言われて、雅のベッドで眠った。

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