《MUMEI》

「俺……二郎が好きなのは変わらない。」

七生の口調が口説くモードに切り替わる。
そうやって、何人の女の人をオトしたんだ?


「ふーん……」

あ、あからさまにふて腐れたようになってしまった。




「……二郎の犬になりたかった。」


「――――――――は?」

また、よく分からん事言った!


「俺のこと飼い馴らして……」

それは、俺に女王様になれと……?


「こんなでかい犬いるか……」

なんだよ犬って。

七生が自転車を停めた。
凛々しい横顔が真っ直ぐ、こちらに向かってきた。
ぴくりと、言葉を放つ前の唇の動作に妙な色気を出される。
こんな表情も七生は出来てしまうのか。


「首に、鎖を掛けて、鼻先にキスをする…… 犬は飼い主を嘗める。」

なんか、
七生の発する一つ一つの言葉に耳がざわつく。
言うこと、おかしいよ……おかしい?

違う。
この言い方は……


「すけべ……」

俺を変な気にさせやがって。

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