《MUMEI》

「ワァァァァ!!!」


扉の向こうで、何かがドタドタと倒れる音がした。


扉を大きく開いて見ると、野球青年タワーが出来上がっていた。


「何やってんの?お前等。」


俺の横から蓮翔ちゃんがひょっこり顔を除かせる。


その表情からは、この場を楽しんでいるようにも見える。


「ん…いや、ちょっと…。」


タワーの下敷きになっている、図体デカいヤツが慌てて答えた。


「ウソを付くな!豪田ぁ!!今俺等のこと覗き見してたろ!?」


蓮翔ちゃんはニヤニヤ笑いながら、豪田と呼ばれたヤツに近寄った。


「だって気になったんだもーん!」


タワーの一番上に乗っていたヤツが立ち上がった。


「へ?」


「だってそいつ、滝澤颯馬だろ??」


そう言って、俺を見やる。


「だったら?」


俺が素っ気なく返事を返すと、


「おお〜本物だあー!!」


豪田が目を輝かせながら俺に近付いてきた。


そして、スッと俺の前で右手を差し出すと…


「握手して下さい!」


ペコリと頭を下げた。


……は?

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