《MUMEI》
山の呼び声
僕は公園の前で足を止めた。 今の時間帯なら、正平が友達と遊んでいるところが見られるかもしれない。
正平が嘘をついているなんて、くだらないことを考えないで済む。


自然と公園の入り口の白い石のタイルに、足が吸い寄せられていた。



コンクリートの道に出ればもう公園の中だ。
遊具や花壇、テニスコート…次々通り抜けていく。




山の中は心地良かった。
僕よりも大きな木々が所狭しと詰め寄り、ざわざわと僕の頭の上で触れ合っている。

その場で腰を下ろした。落ち葉の柔らかさが伝わる。

正平にこびりついてたときは不潔に思えたのに…自ら触れてみると、こうも違うものなのか。

ふと空を見上げる。
煙りが立ち上るような雲、鈍い水色をベースに小学生のころ図工で使った水彩絵の具みたいな秋の葉色たちが揺らめいていた。



眼を閉じる。
見えなくても感じる
風、光、木、
僕はこの世界で歓迎されている






僕を呼んでいる

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