《MUMEI》
二人静(ふたりしずか)
ミーティングの内容は、今年の文化祭の演劇についてだった。


今年の台本は、既に出来上がっていた。


「今年は優秀な新人が入って嬉しいわ」


部長が大絶賛する新人は、頼でも俺でも橋本君でもなく


台本を書いた坂井さんだった。


坂井さんは、元々演じる方ではなく、裏方に興味があるようだ。


しかし、坂井さんは美少女だから、舞台映えがするので、部長命令で脇役で出演する予定になっていた。


「あと、小林君に衣装協力と、動作指導頼んだから」

「あいつサッカー部…」

「万年補欠でしょ」


部長は、再び薫子スマイルを浮かべた。


「部長さん、策士よね」

「つーか、怖すぎだよ…」

表情が穏やかなだけに、喜怒哀楽が激しかった真司の姉の前部長より遥かに怖かった。


「そこ、何か言った?」


「「い、いえ…」」


「じゃあ、各自台本ちゃんと読んで来てね。

特に、田中君、頑張ってね」

「は、ハイ!」


俺は、台本を握り締めて頷いた。


坂井さんが書いたのは、『二人静』という台本で


設定は明治〜大正時代の名家に生まれた二人の男女を中心にした、少し…かなり変わったラブストーリーだった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫