《MUMEI》 「───────」 新木がゆっくりこっちを向いた。 ≪ドクン‥≫ 心臓が跳ね上がる。 正面に顔見たんは‥‥‥ 初めてやった。 サラサラした黒髪に‥ 眼鏡の向こうの‥‥ 黒真珠みたいな目‥。 眩しい位に白くて綺麗な肌‥。 「‥‥‥‥‥‥‥」 声が出ぇへん。 体が‥‥ 固まってもうたみたいに動かへん。 目の前のこいつがウチを見つめとる‥‥ ただそれだけやのに。 ≪ス‥≫ 「‥ぇ」 いつの間にか枝折が手からのうなって‥‥‥ 本に挟まれとる。 「‥‥‥‥‥‥‥」 そのまま新木は何も言わんと‥‥ またページに視線を落とした。 前へ |次へ |
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