《MUMEI》

周りの奴等の目が点になるのが分かった。


そして次の瞬間……


「俺も…!!」


次々と握手を求められた。


俺は意外な展開に、蓮翔ちゃんと目配せする。


蓮翔ちゃんはそんな俺の姿を見て、プッと吹き出した。


「おいてめぇ、何笑ってんだよ。」


思わずムッとして問い掛けると、


「今の顔ヤバかった!!」


蓮翔ちゃんがバカ笑いしながら答える。


すると、その顔を一目見ようと、野球青年達の視線が一気に俺に集まった。


……キモい……。


俺はキラキラさせながら見つめて来る多数の目に困惑していた。


「握手してやったら?」

ハッとして下を向くと、今も尚、豪田が握手を求めて手を差し出している。


懲りない奴……。


だが、俺は豪田の望みを叶えてやろうとはしなかった。


理由は簡単。


「他人に触れたくない。」


そう、俺は他人から自分の身体に触れられるのを拒む。


何故かは分からないが、触られるとやけにイライラが募るのだ。


蓮翔ちゃんもそう言う俺に何か勘づいたようだった。


「そういや、お前近々試合あるんだろ?」


無理矢理話題を変えようとしている。


「ああ、一週間後。来るか?」


その言葉に、いまさっきまで険悪だった空気が、パァアと明るくなった。

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