《MUMEI》

ゆっくりと開かれた目に、思わず息を飲んだ。


鮮やかな赤。


水晶玉の様な綺麗な瞳に釘付けになる。


だが、俺と目が合った瞬間、その瞳が怒りの色を帯びた。


「上のものかあっ!!!」


物凄く低い声と共に、その人が立ち上がった。


ズゴゴゴゴゴゴ……


更に部屋中の家具が浮き上がる。


「わ、わっ!!
ひ、人違いです!!」


ありったけの勇気を振り絞って言い返すと、


「人間?」


その人の動きがピタっと止まった。


浮き上がった家具も、その人の動きに合わせて静まった。


その人は、腰が抜けて床にへたりこんでいる俺に近付くと、人差し指でクイッと俺の顎を持ち上げた。


その人差し指の爪が皮膚に食い込んで、より現実味を増す。


う…っ顔近い……。


俺は、尚も俺の瞳を捕えている鮮やかな赤の双眼に目が放せないでいた。



どれぐらいそうしていただろう。


首がじわじわと痺れて来た。


もう限界!!!


そう目を閉じた時、


「すまなかった。」


低く、凛とした声が聞こえた。

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