《MUMEI》 「あの、名前って“グレイド”だけですか? 名字とかそんなの……。」 「ない。」 「へ?じゃあやっぱり外人さ…」 「あのなあ…」 グレイドはやれやれとでも言う様にため息をつくと、俺にコウモリの様な羽根を広げて見せた。 「見て分かるだろ? 俺は人間じゃない。」 確かに……。 俺はコクリと頷いた。 「だから名前はグレイド。 其れだけ。」 「はあ……。 じゃあ貴方はいったい……?」 「んーそう言う堅っ苦しいの無いな。 強いて言うなら……。」 「言うなら…?」 「人間からは吸血鬼って言われてるけどな。」 そう言って、小バカにした様に笑った。 「……っえ!!吸血鬼っ!!?」 そう言えば…グレイドの口から少し覗かせているのは…… 牙!!!!? 俺は咄嗟にグレイドから遠ざける様に後さずった。 其れを見たグレイドは更に笑う。 「バーカ。取って食いはしねぇよ。」 「え…でも人間の血とか吸うんじゃ…。」 「吸わない。そんなの迷信だ。 この俺が人間の血なんて…す…わけ…い……だろ……が…」 ん? 慌てて顔を上げると、グレイドが再び床に倒れていた。 前へ |次へ |
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