《MUMEI》

見ると、中にいるのはあのイェンシンと、ティエンとかいう男だった。
二人は寝台に横たわる人物をうなだれる様に見つめている。

(・・・あたしの、所為で・・・)

人が・・・死んだ?

(どうしてこんな事に・・・)

何処か遠くへ

行きたいと願ったから・・・?

(そんな・・・)

愕然とした。

誰かの命を犠牲にしたいと思った訳ではない。

しかし、現に一人――死んだ。

膝が震える。

『それで・・・?』

イェンシンがティエンに問う。

『女は起きたのか』

ぎくり、とした。

報復――されるかも知れない。

仲間を一人失った事への・・・。

突然見知らぬ世界に来てしまった恵の精神は混乱の末、最悪な事態を予想する。

彼等は武器を持っているのだ。
それに、イェンシンのあの力・・・。

(あたし・・・も・・・)

殺される――!?

「――どなたかな?」

「!?」

心臓が止まりそうになった。

いつのまにか、背後に一人の初老の男が立っている。

角刈りの白髪に、恵比寿の様に垂れ下がった目。
浅黒い肌をしていて、小柄な割に、しっかりとした体躯をしている。

「おや、お前さん・・・」
「あ・・・」

恵は後退り、首を激しく左右に振った。

「ご・・・ごめ・・・んなさ・・・」

恐ろしさで、歯の根が合わない。

「あたし、違う・・・違うの・・・」

誰かがあたしの所為で――死んだなんて・・・。

信じたくなかった。

「ゆ、ゆるし・・・っ、殺さないで・・・っ!」
「殺す・・・?」

男が首を傾げた時、部屋の中から、イェンシンの低い声が聞こえた。

恵に気付いたのだ。

『ティエン』

イェンシンがティエンの名を呼ぶ。

『――連れてこい』

その低く唸る様な声に、今度こそ心臓が止まりそうになる。

『分かりました・・・』

ティエンが答えるのが聞こえた。

扉が開く。

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