《MUMEI》

わしわし、と顎を擦りながら、好象大人は謎掛けの様に呟いた。

「実は、この国の先帝の皇后様が、恵と同じ様に、人世からいらした方だったんです」

青天が説明した。


この天藍国の先帝はその名を光玉(グァンユー)と言い、賢帝として民に愛された。

皆に慕われ、善政を行った彼の皇后は、異世界から迎え入れた優しき娘・凰娘娘(ホァンニャンニャン)であった。


「『凰娘娘』(ホァンニャンニャン)・・・?」

「鳳凰は本来『鳳』が雄、『凰』は雌だと言われています。
黒鳳凰の末裔とされる皇帝が『鳳』なら、皇后様は正しく『凰』だと言う事なんでしょうね」


皇后は、天藍に留まり、民に尽くし夫である皇帝に仕えながらも、人世への思慕を募らせ、病の床に臥した。

光玉帝は、廟に籠もり、寝食を断ち、黒鳳凰に祈りを捧げた。

祈りを聞き遂げた黒鳳凰は、光玉帝に一粒の植物の種を授けた。

光玉帝は、種を植え華を咲かせ、皇后の枕元に置いた。

やがて華は、黄色い花弁を落とし、白い綿毛を翔ばし始めた。


「ちょっと待って」

恵は、思わず声を上げた。

「黄色い華で綿毛って・・・」
「好――察しの通り、『タンポポ』だ」


皇后の枕元で翔び始めたタンポポの綿毛は、シャボンの様に消えていった。

綿毛が消えると、皇后の手の中に、一袋のタンポポの種が残された。

皇后は枕元に立っていた皇帝に、綿毛に身を包まれた瞬間、人世の様子が手に取る様に脳裏に刻み込まれたと語った。

皇帝は、城内に花園を作り、タンポポの種を植えてみた。

綿毛に身をかざすと、確かに人世の様々な嗜好品・衣服の製造法や、歴史・情報・文化を知る事が出来た。――又、書物等日用品は取り寄せる事が出来る事も知った。

人世との繋がりが出来た事を喜んだ皇后は、タンポポから得られる情報を民に広め、天藍に貢献する事を提案し、皇帝は乱用されない事を条件に黒鳳凰に許しを得た。

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