《MUMEI》

「二人とも、なるべく日本語で話してあげてください。彼女の事なんですよ?」

青天が声を上げる。

「好好・・・、ホータイタイもきっと喜ぶ。笨重も少しは楽になるだろうぜ」
「それじゃ、コイツが此処に居座るって事になるじゃねぇか!」
「善いじゃないですか。行くあても、頼る人もいないんですから」
「お、おいら・・・」

笨重が、おずおずと口を開く。

「おいら、頭ないからよくわからない・・・。でもっ、恵が困ってる、とてもとても困ってるの分かる。
困ってる人、たすけてあげるのは、すごくすごく善い事。大人が教えてくれた。
それから、おいらも焔星連れてきてくれたの、う、嬉しかった。すごくすごく・・・」

笨重は焔星を見て言った。

「お、おいらのごはんもあげる。桃も、梨も、頑張ったら皆ごほうびにおいらにくれるから、全部全部、焔星にあげるから、だから・・・」
「・・・・・・」

焔星は、腕組みをしたまま笨重をむすっ、とした顔で見ていた。

笨重は、おろおろと焔星と恵を見比べていたが、卓上の自分の分の桃に気付き手を伸ばした。

「・・・食べる?これも、あげるから・・・」
「・・・・・・」

おずおずと、桃を差し出す笨重を、焔星は黙って腕組みをしたまま見つめている。

「・・・お、おいしいから・・・」

哀願する様な笨重の目・・・。

「・・・勝手にしろっ」

焔星は、吐き捨てる様に言い、横を向いた。
その顔は、どこまでも不機嫌だった。

どうやら、恵は此処に置いて貰える代わりに、誰かの世話をする事になったらしい。

恵は、意外なものを感じた。

恵から見た焔星は横柄で、誰の意見も撥ねつけそうに見えていたのだ。

「好好、善い子だ二人とも」

好象大人が微笑んだ。

「好――青天、ホータイタイを連れてこい」
「対(トエ)」

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