《MUMEI》

「やってみたから言ってるの!
知りもしないで、勝手な事言わないで!!」
「だったら、その駄目だった回数を言ってみろよ。
どうせ、数回の失敗で大した努力もなく諦めたんだろう」
「どっ・・・、努力したよ!?でも、駄目だったんだからしょうがないじゃん!!」

内心ぎくり、としながら恵は反論した。

「合ってないの!!どうせ辞めた方が善いの分かってたし!?そのつもりだもん!!」

惨めさを感じた。

この気持ちを引きずり出そうとする、焔星から逃げ出したかった。

「どうせ、回りだって早く辞めれば善いって思ってんの分かってんだから!!」
「『どうせ どうせ』って、うるせぇな」

焔星が、煩わしそうに顔をしかめる。

「てめぇはちょっとやって見て、ちょっと自分に合わないと思い込んだら、直ぐに楽に見える逃げ道を選んでるだけじゃねぇか。
満身創痍でぶつかる事なく、とっとと逃げようとしているてめぇに合った仕事なんざぁ、ある訳ねぇんだよ。
『どうせ』今までも、そうやって逃げて生きてきたんだろう・・・ハッ、確かに楽そうで御立派な人生だな」

図星を言い当てられた。

フリーター時代のバイトにしたって、恵は確かに焔星の言った通り、ちょっとでも自分には合わないと思い込むと、直ぐに辞めた。

ころころと職を変えては、親に責められた。

「鶴太太の世話は出来なくても置いてくれ、か?随分ムシの善い話だな。笨重だって、足りねぇ頭で考えて自分に出来る事を見つけて、俺にコイツを差し出したぜ」

焔星は、再び笨重の持っていた桃を一切れ口に、放り込む。

「お、おいらは別に・・・焔星、焔星、もう止めて、止めてあげて。泣いちゃう・・・恵、泣いちゃう・・・」

おろおろと笨重が言うと、焔星はけっ、と吐き捨てる様に言った。

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