《MUMEI》

「泣くだと?・・・ハッ!コイツにそんな性根も誇りもあるもんか。腐る処まで腐ってやがる。
格好つけるだけつけて、悔しいと思う事すら、みっともないとか思ってんだろうよ。
そんなコイツに悔し涙なんて上等なモン、流せる訳もねぇ」

笨重は、まるで自分が言われているかの様な、泣きそうな顔で、恵を見て、小さく呟いた。

「・・・あ」
「・・・焔星」

青天が、大きく溜息を吐いた。

「言い過ぎです」

――恵は、震えていた。

ぎゅっ、と拳を握り締め、俯き、その瞳からは・・・

「あ・・・焔星、恵が・・・」

笨重の声掛けに、焔星が恵を見る。

「――なんだよ」

恵を見た焔星が言った。

「――悔しいのか」

「・・・く、」

――悔しい。

今、焔星が言った事は皆正論だ。

反論しようとすればする程、こんなにも弱くて醜い自分を暴かれる。

「・・・く、やしぃ・・・」

噛み締める様に、恵は呟いた。

「くや・・・しい・・・」

ぼたぼたと零れ落ちる涙を、拭う事すらなく恵は泣き続けた。

「どぅして・・・?」

・・・いつから?

逃げる事を覚えてしまったのだろう。

逃げずに闘う道を――選ばなくなってしまったのだろう。

「悔しい・・・っ」

立ち向かう強さを持たない自分。

何をやっても駄目なんだと言う事実を、毎回実感してしまう自分。

「何やっても駄目で、巧く行かなくて・・・」

分かってる。

分かってた、ずっと。

焔星の言う通り、自分は満身創痍で何かにぶつかってみた事等、きっとこれまで一度もなかったのだ。

傷つきたくなかったから、逃げる事で自分を守っていると・・・逃げる事は自分を守る事だと、勘違いしていた。

――違う・・・

本当は・・・分かっていた。

分かっていたのに・・・。

「・・・フン」

焔星が、恵を見て――言った。

「――『上等』じゃねぇか」

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