《MUMEI》

――何故だか、切なくなった。

「あ、あたし・・・、やってみる・・・」
「恵・・・」

青天が、微笑む。

笨重もホッ、とした様に顔を綻ばせる。

「・・・やってみたい・・・」

自分の中に確かに宿った筈の、小さな淡い力。

その力を――多分、生まれて初めてはっきりと試してみたい、と思った。

好象大人が、頷いた。

「ア゙ー・・・」

鶴太太が、きゃっきゃっと笑いながら、恵に向かって皺くちゃの手を伸ばす。

好象大人が、恵を膝から降ろし、背中を押してくれた。

恵は、鶴太太に歩み寄り、膝を付き、目線の高さを合わせた。

「ア゙ー・・・」
「・・・よろしく」

恵が声を掛けると、鶴太太の皺だらけの手が、小刻みに震えながらゆっくりと上がり、恵の指を掴んだ。

「ア゙ー・・・」

鶴太太が笑う。

恵も、鶴太太に笑い掛けた。

指先から伝わる温もり・・・。

(・・・やって、みよう・・・)

また、駄目かも知れない。

でも今、自分がやってみたいから・・・。

みっともなくても善い。

・・・あがいて――善いのだ。


――流れる涙は、解放の色を放ち、幾度も床に零れ落ちていった・・・。
























――并且故事継續…。

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