《MUMEI》 残りの二人「厳君! 今日はクッキー焼いて来たよ!」 「わかったから、どいてくれ…」 「あの厳を押し倒すとは、やるなあ、くるみ」 「ヘへ!」 「いいから退け!」 くるみと呼ばれた少女の下から厳が叫んでいた。 ニヤニヤしながらその様子を見ていたのは、祐だった。 石川(いしかわ) くるみは、頼のお気に入りの長谷川よりももっと小柄で、可愛いというより、幼い子供のような少女だ。 立ち上がった厳との身長差は、かなりあるから、兄妹か、下手すると、…親子に見えた。 そんな石川は、現状よりも将来性をかなり期待された花嫁候補で、祐と同じ料理部に入部していた。 (大丈夫かな?) 厳にまとわりつく、石川を見ながらチラッと松本を見つめると 「何だか憎めないですよね、くるみちゃんて」 苦笑する松本がいた。 「でも、私はあの人が一番、…恐いです」 そう言って松本が見つめた先には、制服の美少女がいた。 彼女は、松本と同じで部活には入っていない。 しかし、松本と違って、彼女はたくさんの習い事をしていた。 彼女…吉野 撫子(よしの なでしこ)は、文字通り自他共に認める大和撫子だった。 前へ |次へ |
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