《MUMEI》
それぞれの夏休み
それから、金曜日の夜になると雅の部屋に行った。


雅は、俺に付き合うようになってから、他の生徒の相手をしなくなった。


「別にお前の為じゃないよ。俺は、恋人は作らないけど、同時に複数の相手もしないの。
ただ、それだけ」

「何で、作らないんだ?」

夏休みの前日。


雅の『最終レッスン』を終えた俺は、裸で雅のベッドにいた。


「ん〜、婚約者がいるから」


既にシャワーと着替えを終えた雅がサラリと答えた。

この学校に通う生徒の大半は、名家の子息だ。


だから、雅の発言に、驚きもしたが、納得もした。


「生まれた時から決まってる。可愛いし、不満は無いけど。

無いけど、やっぱり自由な恋愛って憧れるだろ?

でも、深味にハマるのは…
怖いんだ。

だから、こんなんななの、俺」

「そう、か」


無理に笑う雅が痛々しくて、俺はそれしか言えなかった。


「そんな顔すんなよ。明日は、好きな人にちゃんと…
抱いてもらえよ」

「うん!」

「忍に想われる人は、幸せだな、きっと」

「雅に想われる人も幸せだよ」


笑う俺の頭を撫でて、雅は優しく笑い、『もう来るなよ』と言った。


俺は、寂しかったが頷いた

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