《MUMEI》
目覚め
白い世界に慣れてきた。
重力に従い動こうと体を機能させる、あちら側とは隔離された感覚。
意識だけで進んでいく浮遊感。
なにも考えない、考えられない、でもこんなにも優しくなれる。
僕は一人の物質らしいモノを捕まえた。
………チリン、
今まで不鮮明だった聴覚が戻って来た。
この鈴の音は僕?それとも正平?
どっちかな……
風が頬を撫でる。
鼻に土のニオイ
嗚呼、目を覚まさなければいけない。
嫌だ
何故?
こんなにも
喜びに満ち溢れているのだろう?
意識がはっきりしていた。此処は公園。
頬が冷たい、泣いてる?
視界はまだ狭い、望遠鏡で覗いた程度。
薄暗い空の下で、木の葉の中に半身埋もれて、
僕は帰りたいと心が鳴いていた。
風が樹の天井へと吹き抜けている。
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