《MUMEI》
おちばひろい
あきら兄ちゃんが捕まえた友達の手、
起きたとき、兄ちゃんの掌にはモミジが握られていました。
友達の手はこんなかんじなのかなあ、と思いました。
なんだか羨ましくて、ぼくもモミジを選んで兄ちゃんに渡しました。
お家に帰ります。
玄関に入ると、違うニオイがしました。
「兄ちゃん………、だれかいる。」
ぼくは当たり前のことを言いました。
「静かにして入ろう、兄ちゃんに全部任せて良いよ?」
ぼくの小指を触って、いつもよりももっと柔らかく兄ちゃんは笑いました。
「あら、初めまして。えーと…昌君?」
玄関にある紫のピカピカの靴を履いてそうな女の人がいました。
目のまわりが真っ黒くて
なんか、怖いです。
ぼくの方に近付いてきたので、兄ちゃんの足に隠れます。
「昌は僕です。」
兄ちゃんは顔が無いみたいに口だけ動かして言いました。
女の人と兄ちゃんは何やら話していましたが、あの人が作ったしょっぱいカレーを三人で食べることになりました。
お父さんが帰ってくるまで女の人がケイタイを触っている前でテレビを見てました。
ぼくは女の人が話し掛けてきた言葉も、臭くて怖くて返事も出来ません。
代わりに兄ちゃんが何か話してくれました。
8時には兄ちゃんと二人でで眠る準備をして、部屋に入りました。
「紅葉見せて!」
ぼくは先刻のことを忘れたくて、兄ちゃんにとっておきの元気な声で言いました。
「あー、それなら今は無理かな」
兄ちゃんは百科辞典を叩きます。もしかして、この下敷きに!!
「しおりにしようと思って、ほら、本に挟む小さいやつ」
兄ちゃんは指で小さな長い四角を作ります。すぐに意味がわかりました。
「おしり明日にはできる?」ぼくは兄ちゃんの腕に巻き付いた。
「一ヶ月はかかるかな、ゆっくり二人で作ろう?」
兄ちゃんはぼくの頭を、いい子いい子してくれました。
「あと、お尻じゃないよ、しおりだよ。」
兄ちゃんの腕、小刻みに揺れてました。
笑ったな!
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